hebiashi diary

てれび見の記録など。

おかえりモネ19週「島へ」95話

ちょっと、近年の朝ドラを思い起こしてるんですけども、第1回の放送時にヒロインの相手役がもう登場してるのって…半青くらいですかね?律くん登場してたっけ?

そういう意味でも本作、まずはちょっと珍しいことになったなと思ってます。文法としては普通の連ドラ文法(ヒロインと相手役が初回から提示される)に近いのかもしれないです。

視聴者である私たちは永浦百音が辿った2014年4月から2019年9月までを登場人物たちと同時に体験してるといってもいいかもしれない。その期間がほぼ同時に私たちが菅波光太朗を観察する期間になっているわけで…これがまた本作がこれまでの朝ドラとは異なる印象を受ける理由なのかもしれません。普通の(と大雑把に括るのもなんなんですが)1クールドラマだったら3か月10回前後の間に飛び飛び5年間をここまで緻密に描写するのは非常に困難なのではないかと思いますが、そこが朝ドラの一番の特徴、1日15分×週5×24週という進み方の持つ尺のゆとりで、こんなに丁寧に、一つの恋愛が成就する様を見る(見守る)ことになろうとは……

百音の成長物語としても見応えはあるのですが、むしろこのゆっくりと進んで花開きそうな百音と菅波という二人の関係を見せてくれた長いラブストーリーとしてとらえることができそうなのがこれからの楽しみでもあります。

 

……というわけで、東京編の最終話がこの95話になります。

菅波がモネに聴かせようとした、というか、モネと一緒に聴きたいと思ったのは、かつての菅波の患者で元ホルン奏者の宮田さんの演奏。曲は『ダニーボーイ』でしたね。愛しい恋人をいつまでも待つよ、死んでるかもしれないけど待ってるよ、という内容の歌詞がついてますね。なんかもうそれだけで泣いちゃうな…。

モネは演奏を聴きながら昔の自分に思いを馳せます。そういえばこの子、サックス吹いてましたよね。音楽の道を目指して挫折して、帰宅するその日に震災に見舞われたのでした。菅波はそのことは多分知らないはず…。この脚本家は周到なのでもしそうなら前にちゃんとわかりやすくフラグ立ててたはず。モネが音楽をやめた頃、この宮田さんも音楽を病に奪われてたんですねえ……

強烈過ぎる経験の前に「音楽は無力だ」とサックスを封印してしまったモネが、「音楽はこれほどまでに背中を押してくれる、決して無力などではない」と気付いたようなので、もしかしたら今後、ふたたび音楽と向き合える日がくるのかもしれません。

宮田さんが去って余韻冷めやらぬ二人は今後の話をします。

モネは「島に戻ります」と言って勝手を詫び、菅波も「突然東京へ帰ると決めた僕も勝手だ」と言います。気仙沼と東京、また遠く離れてしまうことになり「結婚は保留だね」「とにかく二人の仕事が落ち着いてからじゃないと」そうそう、そうですね。自分のやりたいことだけでなくパートナーの仕事や夢も尊重するのがいまどきの恋愛観、結婚観なのだと思います。

「一緒にいるってどういうことでしょう」と問うモネに、

「一緒に…二人の未来を考えるってことじゃないですか?」と答える菅波。

かすかにうなずくモネに、ほんの微かに「ん?」と返す菅波の声の柔らかさ……

キュンとしますね……

 

さて、心を決めたモネは報道番組を辞することを高村さんに告げます。その情報はすでに朝岡さんから入手済みだった高村さんも引き留めたりはしない。

島に戻るにあたって会社を辞めても…とまで考えていたようだけど、実際問題肩書と会社のデータへのアクセス権無しには満足な仕事ができないと考えていたモネは新規事業として「地域密着の気象予報士」を提案します。社長の好む傾向などもちゃっかりプレゼンに入れてきてるのはさすがモネです。モネはもともと仕事出来る子設定ですし。事業の内容に加えてパッションも見せてくるモネ。自分が気仙沼出身であること、自分でも病的と感じるくらいに地元のために役に立ちたいと考えてきたこと、今なら地元に貢献できると思ったこと。先日の竜巻被害に帰郷した際も、地元を助けたいとかではなく一緒に何かやりたいと感じたこと。要はこれ、ミッションステートメントですね。「わたしの使命はこれだ」と表明したんです。

WE社は懐の深い会社で、個人の「やりたい」を叶えてくれる会社だというのは前々から細かく描写されていたので、ここで社長が新規事業まではいかないけどブービー賞として初期費用30万、2年の期限付きで地方営業所扱いで席を残し基本給も出してくれるという太っ腹な提案をしてくれます。いい会社だホント。

朝岡さんからそのことを聞くモネ。もう逃げ出せないぞ、としっかり釘を刺してくるあたり厳しいけどいい上司です。

「ようやく帰れますね」という朝岡さんの前にいるのはもう、かつて気嵐(けあらし)を見て「なにもできなかった」と涙した少女ではないんですね。感慨深かったです。