hebiashi diary

てれび見の記録など。

「家事と家族の日常生活」

家事と家族の日常生活―主婦はなぜ暇にならなかったのか

家事と家族の日常生活―主婦はなぜ暇にならなかったのか

読了してからだいぶ経ってしまったのだが、感想を。本書は、現代の女性(主に主婦)が置かれている状況を実に的確に捉えている。たとえば「働きバチとは日本人の結婚して仕事を持っている女性である(p23、引用者により傍点は太字に変更)」ことや、過剰労働となっている家事を減らすには未婚化、少子化もやむなし(なぜなら家事の中でも育児は代替がききにくく、機械化もできないものだから。それに、単純に考えても家族が増えるということは、付随する炊事洗濯などの家事も増えるということになるから。子育ての終わった家の主婦などの家事規模が多少縮小されるのは、自分の母親などを見ていてもわかることだ)という現実があるということ。家事機械(洗濯機や炊飯器、冷蔵庫など)が行き渡り、ガスや電気/水道などのインフラが整備されたことは家事時間の短縮につながるが、そのぶん家事水準が底上げされることになり、結局時間短縮にはならなかったのでははないか、ということ。要は、主婦は暇じゃない。
戦前/戦後、都市と農村での家事水準などについても触れられていたが、既読の岩村暢子著「現代家族の誕生」とも重なるところがあって興味深い。
もともと論文なのでちょっと取っ付きにくいが、述べられていることは「そうそうそうなのよー!」と一から十までうなずけることばかりである。やはり書き手が主婦だからかな。でも主婦だから主婦擁護をしてるわけじゃなく、いったい家事労働とはどういう位置づけなのか?というところから見直し、きちんと分析していると感じられる。
いやー、実際、「主婦が暇そうに見える理由」のひとつである「買い物や幼稚園へのお迎えついでの立ち話」では、生活に欠かせない近所情報があれこれと入ってくるものなのですよ。そういう情報って、なくても生活は出来るけど、あったほうがいろいろとより的確な選択が可能になるものです。
この手の主題に興味のある方は是非一読を。